医療法人聖光園 細野診療所 漢方治療 since 1928
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アトピー性皮膚炎の漢方治療

症状

アトピー性皮膚炎は慢性で反復性に経過する湿疹を伴う疾患です。かゆみや、湿疹が繰り返しおき、治療には時間を要します。当院にも乳幼児から50代くらいの年齢層の方まで幅広く来院されます。当院の漢方治療では、アトピー性皮膚炎の皮膚の症状を改善する治療を行いながら、体の免疫力をあげて病気と闘える体づくりを行っていきます。

原因

アトピー性皮膚炎の原因は様々で、ひとつではありません。
アトピー性皮膚炎の原因は免疫異常や皮膚のバリアー機能異常などの体質的因子と、ストレスなどによる自律神経系の異常、気候やアレルゲン、食事など外的・環境的因子など、多種多様な原因が考えられます。

漢方ではアトピー性皮膚炎の原因・機序として以下のような事が考えられます。

原因の一つとして、「気」(エネルギー)の不足により、本来持っている体の力が弱くなっていることが考えられます。

子供のアトピー性皮膚炎を考えてみてください。乳幼児の時期は体も弱く、「気」が足りない状態のため、アトピー性皮膚炎もなかなか治りません。しかし、小学生に入る頃には体もしっかり出来てきて、「気」を外部より補充できる様になり、アトピー性皮膚炎を押さえ込めるエネルギーも自然と増えてきます。小学校にあがる頃に、アトピーや喘息が良くなることが多いのはこういう理由によります。

また、「気」の不足による解毒機能の低下も考えられます。
「気」は食物として外部から補給されます。ところが、胃腸の消化吸収の力が弱いと十分なエネルギーが作れません。また、不消化物も増えます。エネルギー不足の体は、全身への「血」や「水」の運行が悪くなります。肝臓も十分な働きができず機能低下により適切に解毒が行えなくなります。

アトピー性皮膚炎が長期間に及ぶと心身ともに疲弊し、いろいろと支障も出やすくなります。皮膚のエネルギーが不足すると、血流(血)の滞りが起き、水分喪失(水)など、皮膚の持つバリアー機能の低下、皮脂腺の分泌低下へとつながり、アトピー性皮膚炎の原因となります。皮膚は乾燥し、紅斑や湿疹(虚熱)が出現を繰り返します。皮膚機能の水分代謝が極度に低下すると浸出液を伴うようになります。

アトピー性皮膚炎の治療

西洋医学的治療

詳細は控えますが、西洋医学的にはステロイド剤、プロトピック、ネオラールなどの免疫調整系の薬剤や抗アレルギー剤などを中心にした治療になります。

漢方的な治療

アトピー性皮膚炎の治療に限らず、漢方治療は人(体)と疾患の両方を診て治療します。

西洋医学のアトピー性皮膚炎の治療はほぼパターンが決まっています。それは体を診るのではなくアトピーだけを診ているからです。東洋医学では、体の中から出て来るアトピーと捉え、体と疾患の両者を診て治療します。体の状態は人それぞれですが、当院では生薬の単独成分をエキス剤として常備していますので、その方の状態に合わせた漢方処方で治療していきます。

アトピー性皮膚炎の場合は、まずは体に十分なエネルギーが取り込まれて全体に行き渡るよう、体の消化力を高め解毒力を補うなど、体を強くしていく治療を行いながら、同時に皮膚炎の症状に対しても、乾燥や炎症を緩和する治療を行います。また長期の経過を辿って、心身ともストレス過多になっている方には漢方的に「気」の巡りが悪いと判断し、気の巡りを改善する治療を行い、心身の状態を整えていきます。

例えば、比較的丈夫な体格で顔の赤味が強いアトピー性皮膚炎の方などは、黄連解毒湯おうれんげどくとう + 桂枝けいし + 石膏せっこうの組み合わせで治療を開始してみます。服用後の経過をみながら、皮膚の炎症が落ち着いて来れば乾燥を治すために四物湯しもつとうを少し加えることも可能です。その後の経過により、温清飲うんせいいん + 薏苡仁よくいにんに切り替えたり、または加減一陰煎加亀板膠かげんいちいんせんかきばんきょうを使ったり、その方の回復の速度、その時々の状態を細かく見極めながら、種々の組み合わせを考えて治療することになります。

漢方処方について症状別にまとめたものを後述しますが、その前に生活習慣と食生活について簡単にお話します。

生活習慣の改善もアトピー性皮膚炎の治療の大事な要素の一つです。生活習慣の改善と言っても、暴飲暴食など無茶をしない、タバコを吸われる方は本数を減らす、または止める。皮膚を清潔に保つ・・・など、どれも大それたことではありません。ストレスにならない程度から開始し、徐々に改善していければ良いと思います。

食生活では、脂物や白砂糖、生クリームなどを控えるというのが基本です。ほとんどの方がすでに注意されていらっしゃいます。意外に知られていないのが、餅米です。餅米にはヒスタミン分泌を亢進させる作用がありますので、アトピー性皮膚炎などが悪化します。餅米は煎餅にも使われていますので要注意です。

クリスマスケーキ、お正月のお餅とでアトピーが悪化する方も多いですが、これらのイベントは生活する上での大切な楽しみの一つでもあります。少しずつ気をつけていいかれれば良いのではないでしょうか。

処方

漢方処方の話に戻ります。ここでは、私が良く使う処方の一部を、皮膚炎の症状別に簡単にご紹介します。

赤みが強く炎症の強いタイプ

黄連解毒湯おうれんげどくとう
赤味が強く炎症の強いタイプのアトピー性皮膚炎の方の第一選択です。但し、体を冷やしてしまうことがあり、また長期に試用していると皮脂腺の分泌を抑制し逆に皮膚を乾燥させてしまうので注意が必要です。胃腸系の弱い方には胃を保護する生薬を加えて処方します。
第一黄解散だいいちおうげさん
便秘傾向の強い方に用いて効果があります。瀉下作用(お腹を壊す)が強いので慎重に用います。
四逆解毒湯しぎゃくげどくとう
腹診上(お腹の診察)ストレス所見があるタイプの方に使用します。自律神経を静めることにより掻痒感が低下します。

皮膚が乾燥しているタイプ

温清飲うんせいいん
黄連解毒湯50%と四物湯(皮膚の血流を改善する)50%を組み合わせた処方になります。黄連解毒湯の症状から皮膚が乾燥してきた状態に使用します。但し、この処方をいきなり使用すると、皮膚の血流改善作用が前面に出てしまい、逆に発赤が悪化することがあるので注意が必要です。これは瞑眩めんげん(改善の過程で一時的に悪化すること)ではなく単なる悪化と考えて下さい。ですので、私は温清飲をいきなり使うことはほぼありません。
加減一陰煎加亀板膠かげんいちいんせんかきばんきょう
エキス剤は当院にしかありません。乾燥タイプのアトピー性皮膚炎に使用します。皮脂腺の分泌を亢進し、表皮角層の水分保持力を高め乾燥肌を改善します。さらには軽度に皮膚の炎症を抑える生薬も入っています。上述の四物湯で悪化するタイプの方や無効の方にも使えます。

浸出液が出るじくじく湿潤タイプ

五物解毒湯ごもつげどくとう
浸出液が出るタイプのアトピー性皮膚炎に用いますが、単独で用いるよりも、他の処方と組み合わせて使うことの多い処方です。
消風散しょうふうさん越婢加朮湯えっぴかじゅつとう
特に消風散は夏場に悪化するタイプの方に効果があります。

その他にも、治頭瘡一方ちずそういっぽう清上防風湯せいじょうぼうふうとうなどを使うことがあります。

治頭瘡一方ちずそういっぽう
頭部・顔面に症状が強い場合に用います。但し、副作用として下痢があるので胃腸系の弱い方には使いません。
清上防風湯せいじょうぼうふうとう
一般的にはニキビで使われる処方ですが、構成内容が、黄連解毒湯が基本となっていることを知っていればアトピー性皮膚炎でも使うことが出来ます。清上防風湯は黄連解毒湯と十味敗毒湯じゅうみはいどくとうを合わせた処方ですから、特に顔面のプツプツとした赤味を帯びた状態に効果があります。

頻用単独成分

良く使う生薬の一部を下記の表にしました。その他にも桔梗ききょう牡蠣ぼれい牡丹皮ぼたんぴ大黄だいおうなど多種類の単独成分を用いて症状に合わせて処方を組み立てます。

人参にんじん半夏はんげ生姜しょうきょう
胃腸の弱い方に加えます。
桂枝けいし
シナモンですが、顔面・頭部などの熱を下げる作用があります。のぼせが強い場合、顔の赤さが目立つ場合などに使用します。
石膏せっこう
体内の熱を取ります。皮膚の赤味を和らげ、口が渇く、体が熱くてしょうがないなどの症状を改善します。
金銀花きんぎんか荊芥連翹粒けいがいれんぎょうりゅう
皮膚の感染を予防します。引っ掻いて傷になり、それより感染し悪化することを防ぎます。
茵蔯蒿粒いんちんこうりゅう
体の解毒力を高めます。黄連解毒湯に既に含まれていますが、さらに増量したり、また他の処方にも加えたりします。
蒼朮そうじゅつ萆薢ひかい
皮膚の水分代謝を向上させます。
薏苡仁粒よくいにんりゅう
皮膚の小さいイボを改善する作用がありますが、いわゆる美肌効果があり、炎症でダメージを受けた皮膚の回復に役立ちます。
黄耆おうぎ
弱った皮膚を強くする作用があります。皮膚を閉める作用があり、皮膚の気が外に漏出するのを防ぎます。一般に寝汗が多い(つまり皮膚から漏れ出るのを防ぐ)タイプの方に用いたりします。

アトピー性皮膚炎でお悩みの方、今受けている治療で効果を感じられない方、いつでも細野診療所(大阪東京)へご相談ください。

各診療所はこちらからご覧ください

この記事を書いた医師
東京診療所 細野 孝郎

細野 孝郎(ほその たかお) 院長

【現在 細野漢方診療所 責任者
医療法人 聖光園 細野診療所 東京診療所(2021年12月10日閉院) 責任者】

03-5251-3637初診予約

昭和63年北里大学医学部卒 日本東洋医学会認定医・日本臨床抗老化医学会名誉認定医

川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より当院でも診療を開始。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、洗濯、料理、掃除、フルマラソン(サブフォー、シカゴ、ニューヨーク、ベルリン、フランクフルト、香港、東京、大阪、京都、神戸)など。
漢方では、体を整えることで、病気を治したり、また病気になりにくい体作りをします。体のことでお悩みの方はもちろん、現在は健康だと思われている方も、ビタミンを摂るように、自分に合った漢方をみつけて、健康で長く楽しい人生を送りましょう。

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